2025/06/21 17:07
間借りで本屋さんを初めて3日が経った。初日が水曜日だったこともあり、平日会社員の僕は店頭には立たず開幕。対応をしてくださったスタッフの方からの売り上げ報告や、「こうした方がいいかも!」という意見をいただき平日を過ごした。土曜日になり、初めての出勤。ドキドキしつつも、本屋を求める母数自体は少ないことを承知の上だったので、飲食店のように押し寄せることはないだろうと、どこかリラックスした気持ちで臨んでいた。
朝9時、同スペースで喫茶を営業されているお店に合わせて本屋もオープン。朝ということもあり、モーニング利用の方がちらほら来店。隣でホクホクと香るコンプレット(目玉焼きと生ハム)やアトランティックサーモンのガレットの匂いにつられて、今日の朝はヨーグルトしか食べてないことにお腹が気づく。喫茶利用の方でもサラッと本のスペースをのぞいてくれる方が多く、購入はいただかなくとも手に取って、触って、ペラペラめくっていただける光景に、"本"という新たな、もしくはさらに深い世界へのコンテンツを届けられる環境に嬉しく思う。
11時ごろになると知り合いの方にも来ていただき、30分以上座ってじっくりと読み込んでいただいたり、心の花束を届けに来ていただけたりなど、30度を超える猛暑のなか来ていただいたことにまた嬉しくなる。中には別の本屋さんで知り合った方が忙しい合間を縫って「○○くん(別の本屋の店主)にも様子伝えたくて!」と、来ていただけた。バシャバシャと宣伝用に写真を撮っていただき、さらには当店のオリジナルサービスである『どきどき5,000円選書』(選書代含め3〜5冊ほど僕が本を選んでお渡しするサービス)をやってほしい!と申し出てくれたのだ。初めてこのサービスを申し込んでいただけたこともあって、僕の方がドキドキしながら丁寧に3冊選んだ。深くは知らないながらも、何をやられている方なのかであったり、どんな本を普段読んでいるのかであったり、少しの情報を頼りにこんな本が喜ばれるだろうかと、僕のフィルターを通してお渡しできた。結果として、選んでお渡しした本にとても喜んでいただけたのだが、おせっかいながらにも相手のことを知り、「こういった本もあるよ」と、本を通して世界を広げる役に立てたのであれば、このサービスを提供できてとても幸せだ。
その後はゆったりとした時間が流れて本屋として成り立たせるという厳しいパンチも喰らいつつ、名古屋からお越しになった方もいらしゃって、やはり自分の手で直接本をお届けできる環境にあることが自分にとっても、性に合っているなぁと。自分の選んだ本が平日の合間にも買ってくださったことはとてもありがたいことなのだが、どうしても情報としてしか自分に伝わるものがなく、不完全燃焼感が心に残る。本屋として自ら店頭に立ち、自分の手で直接お渡しすることでより彩度高くお客さんのことを意識することができるし、消費者としての立場しか見えてこなかった視界から、提供者としての視界にまで広がった。「運営すること」と「販売すること」は、似ているようで得られるもの、感じるものが全然違うものなのだなと実感することができた。これはやはり実際に店頭に立たなければ気づけなかったことだろうし、お客さんが来なければ頭にすら浮かばなかったことだろう。もちろん本屋をやる前から潜在的に薄々勘づいていたとは思う。でもそこには"思う"と、"実感する"の違いが明確に存在する。どうしても"思っている"だけでは自分の答えとしては不十分であるし、説得力も皆無だ。経験こそが本来の意味での正解だと思うからこそ、地味ながらも少しずつできることから手を広げていき、街を担う一人として貢献できたらと思う。今日、僕にとってまた新しい正解を導けたことに感謝したい。これを書いているのが17時。営業時間は20時までなので、まだ時間があるというのにこの気持ちを表したくって、思いも立っていられずここに記した。