2025/06/23 19:31

果たして自分一人でここまでできたであろうか。周りの方が力を貸してくれるたびに、なにもお返しできていない自分の不甲斐なさに落ち込むばかりだ。ギブアンドテイクを超えたサポートトゥサポートの関係が築けているとしても、人体の組織に埋め込まれた返報性の原理に溺れてしまいそうになる。


間借りで本屋をやって数日が経った。実際に自分も店頭に立って、来ていただいたお客さんの対応をするが、自分が立てない日はスタッフさんに対応していただいている。「書店員さんになったみたいで楽しい!」と言って、本の販売をしてくれたり、改善点を提案してくれるのだが、もちろん給料を払うわけでもなければ、給料に代わる報酬が用意されてるわけでもない。そもそも「うちで間借りやる?」と声をかけていただいたオーナーにも頭が上がらない。本屋の利益率の低さを理解しているからといって、建物の大事な、しかも通りから一番見える場所をご厚意で貸していただいている。

「本屋やります!」と宣言してから、自分ではまだ仕入れることしかできるようになっていない。仕入れた本を、棚に並べ、本屋らしく振る舞うだけ。それなのにお客さんからは「おめでとう!」や「ありがとう!」といった、謝意のお声をかけていただく。本来、僕ではなく周りの方こそ適切な対象だろうに。ありがたく受け取って、また自分にできることを考える。

間借りで本屋をやっているのは、宣伝も兼ねながら実店舗用の物件を探しているためだ。周りに空いている物件はあれど、どうしても薄利な本屋とは相性があわず、高嶺の花としてしか映らない。高望みしているのは承知なのだが、成り立たせるためには直球だけで勝負するわけにもいかない。理想の物件が見つかるまで奮闘する日々なのだが、そこでもまた周りの方が力を貸してくれている。一人の方が他の方に声をかけて、声をかけられた方がまた他の方に声をかける。ポップウィルスが伝染していくみたいに、僕の届かぬところまで拡大している。もう頭を挙げているのがおこがましいくらいだ。そんなことをしても自分にも相手にもなんの得もないので、求められている場所を提供できるよう消火しないよう少しずつ自分にできることをやっていこうと思う。温かい街にヒトに恵まれてありがたい限り。「ゆっくり、いそげ」の精神でこれからも本屋の準備を進めていく。